どうも。戸津坂京介です。
本記事は初めてのWEB小説以外の本に対するレビューの投稿ですので至らない点もあるかと思いますが、何卒ご容赦をお願い致します。
さてそんな私の記念すべき初レビューですが、レス・エジャートン様著の『「書き出し」で釣りあげろ」を取り上げさせていただきたいと思います。

「書き出し」で釣りあげろ 1ページ目から読者の心を掴み、決して逃さない小説の書き方
- 出版社 : フィルムアート社 (2021/11/26)
- 発売日 : 2021/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 304ページ
- ISBN-10 : 4845921057
- ISBN-13 : 978-4845921058
本著は文学理論についての実用書で、技術的側面もさることながら文学の商業的な側面も描いた著書となっております。著者のレス・エジャートン氏は多数の賞にノミネートされる作家であるながら、出版エージェントでお勤めになったことのある経歴豊富な人物で、出版社の社員がどういった基準で膨大なノミネート小説を捌いているかといった経験談も語られておいでです。
本の内容は大別して、
- 書き出しの重要性
- よい書き出しとはどんなものか
- よい書き出しの書き方
- 実例および編集者の言葉
に分けられると思います。
本当にちゃんと「書き出し」に特化されていて、とりあえず書き出しについてはこの一冊を本棚に入れておけば大丈夫だなと思える作りになっています。ちなみに書き出しとは初めの1~4p部分のことを指すそうです。
特に私が心を揺さぶられたのが「書き出しの重要性」と「編集者の言葉」の部分でした。それらは作者のエジャートン氏が出版エージェントで務めるにあたって周囲の編集者がどういった基準で売れる本を見極めていたのかが書かれており、海外の事例とはいえ商業作家を目指す身としては非常にためになるものでした。
定価2000円+税と割高ですが、個人的には買ってよかったです。
ではそれぞれの内容について簡単に説明をしていきたいと思います。
目次
書き出しの重要性
これから書き出しの書き方を教えますよ!という本なのですから、書き出しが悪いとどれだけ損をするかについて書かれているのですが、それ以外にも編集者の方が送られた単行本一冊分の本をどの段階で切るかについてが記されており、その点が大変興味深かったです。
当然海外の例ですので日本の出版社の実情はわかりませんが、現状のWEB小説コンテストに1万を超える作品が応募されているのを見ると、チェックリストが存在していてもおかしくないような気もします。
例えば書き手が安定しない時点で読むのをやめる、書式がおかしいだけで読むのをやめる。薄情にも思えますが、そういったことを全て丁寧にこなしておられる方の作品を世に出すためならそれも致し方ないことかと思えますね。
この本は実際に作品を応募する前にどの点を見直せばいいのか、作者自身のよいチェックリストにもなるでしょう。
よい書き出しとはどんなものか
この点についての部分が一番厚く説明がなされており、およそ10項目に分けて解説がなされています。
いわば本著のメインともいえる部分なのですが、書き出しと作中のリンクのさせ方など、「へっへ、気になる書き出しで人目を引いてやりゃいいんだよ!」といった卑しい内容ではなく、書き出しをどのように有効に使うかなども書かれており、小手先ではなく作品のクオリティにも繋がってくる内容だと感じました。
私が特に面白かったのは駄目な書き出し一覧で、思わず「あるある!」と言ってしまう内容の連続でした。
特に主人公の持論が数ページに渡って語られる。というパターンは私も書いてしまいそうなので、身につまされる思いでした。
著者の小説講座の先生も勤めたことがあるそうで、生徒達の「いえ、先生!私の作品にはこの要素が必要なんです!」対先生の「そんな要素が必要なら捨てちまえ!」というような争いが書かれていて、目に浮かぶようでした。
よい書き出しの書き方
この部分は本著の実践編といった感じで、書き出しのパターンや、それぞれのパターンではどういったことに気をつけるべきかなどが詳細に書かれています。
結構、「いやあ、これWEB小説でやったら上手くいかなそうだなあ」と思う部分がある側面、特徴的に登場人物から紹介する際のテクニックなどは、キャラが重視されることの多いWEB小説でも有効に働くかなあというように感じました。
実例および編集者の言葉
この部分はね~、刺さりましたね。
特に私のような人生観の浅い人間にとっては、小説を書く!ということになると、「まるでテーマパークじゃないか!」というようになんでも取り扱って良いような気がしてしまいますが、ここで初めて本著から引用したいと思います。
有名なベストセラー作家と比べて自分がいかに才能があるか、自分の本がどれほど魅力的なのかを話す時点で、その作家はだめだとすぐにわかります。
謙虚な作家ほどよりよい作品が書けることが、これまで繰り返し示されています。すぐれた作家は、自分がどれほど学ばなければいけないかを知っているからです。
289p
これは著書の知り合いの編集者の書き出しに求めることを記した場所に書かれていた、ジョディ・ローズという方の言葉なのですが、「あんまそういう事言わないで!」って感じですよね。
しかし、多くの職業で謙虚さが求められるなか、なぜ作家だけが高慢ちきな振る舞いを許されると思ってしまうのでしょうか。
もちろん自分の作品を愛することに罪は一切ありません。ですが、常にあらゆるものから学ぶ姿勢を取っておいて損することはないでしょう。そして、多くの反感を買うであろうこの発言をしてくれたジョディさんに感謝をしたいと思います。
ちなみに実例は結構数が揃っています。そのままWEB小説に活かすのは難しいですが、考え方を吸収する分には良いと思います。
お買い求めには
ちなみに電子書籍版は年明けリリース予定だそうです。
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